レッドハウス:ウィリアムモリスを巡る旅2


さて、この夏のマイツアー。”ウィリアムモリスゆかりの場所を巡る”

2回目は、Red House。


ロンドン郊外東側のケント(KENT)にありますが、電車でも行けます。

ここは、ウィリアムモリスが建てた唯一の自邸で、彼が大学時代に知り合った友人フィリップ·ウェッブと共にデザインした家として有名です。

この家の構想は、大学時代にしたフランスのノルマンディーへの旅の途中に閃いたそうです。聖職者を目指して大学へ進んだモリスですが、このノルマンディーへの旅で教会建築に触れたことがきっかけで、デザインの道へ進むことになるのです。

モリス自身が”13世紀のスタイル”と表現したこの家は、ゴシックの影響を多く受けたものです。それと同時に、フィリップ·ウェッブのアイデアである、地元の素材を使う、という考えの元、名前の由来になる赤レンガが使われました。

まさしくここは、モリスの、”良いデザインと良い家は共にあるもの” という考え、彼の理想郷を実現させるための試みの場所でもありました。

モリスはこの家のトータルデコレーションのために多くのものをデザインし、それがモリスコレクションのスタートにもなりました。その範囲は、壁紙、タペストリー、家具、ステンドグラス、ハードウェアなどなど。建築中は近所にまで住んで、そのデザインに細部までこだわったそうです。

大好きなジェーンと、当時はご法度であった身分の差を超えて結婚したばかりの新婚のモリス。夢と希望に溢れるこの頃が、人生で一番幸せだった時期のようです。

実は、ここは2回目の訪問です。

前回は5年前に来ましたが、その時の私は”ウィリアムモリスと言えば、アーツアンドクラフト運動で有名な人”程度しか知りませんでした。

今回はウィリアムモリスギャラリーで予習もし、さらに理解が深まりそうです。。。

ここはナショナルトラストが管理していて、メンバーでなくても入場料を払えば入れます。

11時から1時までで、英語のみですが、予約してツアーに参加するのがオススメです。

レッドハウスのウェブサイトこちら(英語のみ)

さて、レッドハウスは普通の住宅地の中にあり、入り口はこのような感じです。

ブループラークがなければ、通り過ぎてしまいそう。



門を通ると、家が見えてきます。


家の周囲は広々した庭があります。

この庭もモリスにたくさんのインスピレーションを与えました。


モリス初期の頃の壁紙デザインで知られるこちらのTrellis(トレリス)も、この庭からインスピレーションを得てデザインされたそうです。


(Source: http://collections.vam.ac.uk/item/O78220/trellis-wallpaper-morris-william/)

緑のトンネルまであります!こんな庭が家にあったら毎日楽しそう♪


さて、時間になり、ツアーが始まりました。

ツアーでは最初にモリスの人物紹介から始まります。モリスを知らずして、レッドハウスは楽しめません。

モリスがこの家を建てるまでの彼の簡単な紹介。

その辺りはあらかじめウィリアムモリスギャラリーを訪ねてあると、バッチリです!

モリスギャラリーとレッドハウスは1日の中でセットで回れる距離です。が、レッドハウスのツアーは午前中しかないので、1日でレッドハウスとモリスギャラリーを回ると、先にレッドハウスでその後ギャラリーになってしまいます。前回の私はそれをしちゃいましたが、やはりおすすめなのは、ギャラリーを見てからレッドハウス。可能であれば日を分ける方が、じっくり見られます。

ツアーが始まると熟練のガイドさん(おそらく近所に住んでいる方と思われる)が、玄関から入って、部屋の中を歩きながら、それぞれのデザイン秘話をお話してくださいます。



玄関のドアに、そこに入っているステンドグラス。ゲストが最初に目にするアートです。


ゴシックの特徴である、尖塔が様々なところに現れています。

ガイドさんのお話は、デザインのお話の他にもモリス自身と家族について、またこの家での生活について、そしてモリスが去った後のこの家について、のお話もして下さいました。

家の中のディテールはもちろん興味深いですが、それ以外にもモリスが去った後のこの家の歴史、というのが、興味深かったです。

ここは、モリスと妻ジェーンの新婚夫婦の新居でした。この家で2人の娘たちにも恵まれました。考えただけでも幸せそうです。モリスの”いいデザインといい生活は共にあるべき”という考えに基づいて、モリスのたくさんのアイデアを盛り込んだ理想郷だったのです。

いい人生にはいい友人たちが大切だというのが彼の考えで、週末は多くの友人たちが集まり、モリスがワインセラーからお気に入りのワインを運び、ごちそうで持てなしたり、という楽しい時間が多かったそうです。自分がデザインした自邸で、ワインで友人をもてなすなんて、、私も憧れます。。

でも、そんな日は長くは続かず、モリスがこの家に住んだのは、わずかに5年程でした。

身分の差を超えて結ばれた妻ジェーンとの結婚生活は難しい局面を迎え、モリスは友人ロゼッティと共同でオックスフォード郊外のケルムスコットマナーを借りて、そこにモリスの妻ジェーンと子供達は移り住み、レッドハウスにあった家具の多くも移動しました。

ロゼッティはモリスの親友で、モリスの妻ジェーンにとっては心密かな想い人。

実はジェーンは最初からロゼッティに惹かれていたと、ウィリアムモリスギャラリーにはありました。でも、当時ロゼッティには交際中の婚約者がいたのです。

ロゼッティの妻が亡くなったのをきっかけにジェーンとロゼッティの関係は発展、、、というお話でした。

モリス本人がこのレッドハウスを再び尋ねることはなかったそうです。

彼の夢と理想を実現するための家。多くの素晴らしい思い出もあったでしょうが、

その佇まいは、モリスにとってはもう見るに耐えないつらいものであった、という記述が残っています。

モリスはこの家を当初賃貸に出そうとしたそうですが、借り手がつかずに、当初の建設費よりもはるかに安い価格で売りに出され、その後様々なオーナーの手へ。

それぞれのオーナーはモリスのデザインを大切にしたそうですが、家の中はモリスが住んだ当時の様子からは変わってしまったそうです。

幸いにも、1950年代にこのレッドハウスを購入したオーナーはモリスの思想に深く影響を受けていた人で、モリスの娘、メイの教え子でもあったそうです。彼らはモリスの意向を忠実に再現すべく、当時モリスが住んでいた当時の復元に力を注ぎます。その努力で少しづつこのレッドハウスは当時の様子を取り戻し始め、彼らが亡くなった後は将来的な保存のためにと、2003年にナショナルトラストへ寄贈。こうしてきちんとメンテナンスされて一般公開されています。


壁面右側にペンキを剥がした部分があります。


ペンキ下に残るオリジナルの壁面です。


訪ねた人なら必ず覚えているであろう、このキャビネット。。


オリジナルの色やデザインは、資料で再現されています。

この”モリスの後のレッドハウス”のお話を聞いて思うのは、歴史ある建築物は誰にどのように管理されるかで、運命が大きく変わってしまうということ。

このレッドハウスももしかしたら、解体されて土地が売られて、という憂き目にあっていたかもしれません。

実はこのレッドハウスは複数のオーナーに所有されていたこともあり、当時のものはあまり再現されていないようなのです。

現在でも当時の様子を復元させようと様々な調査が進んでいるようですが、モリスが住んだ当時の状態に戻すには、まだ多くの時間とお金が必要なようです。

モリスが目指した、理想のデザインとライフスタイル。

週末毎に友人たちが集うにぎやかな新婚生活。2人の娘にも恵まれ、順調に広がるビジネス、潤風満帆で夢と希望に溢れていた頃と、その先にある何か。

興味深いお話の数々でした。

少し知るだけでさらに自分の無知に気付かされ、もっといろいろなことを知りたいと思えてきます。

モリスの足跡を巡る旅は、まだまだ続きます。。

他のウィリアムモリスを巡る旅は、以下からリンク先へジャンプします。

ウィリアムモリスギャラリー(モリスの子供時代の家、現在はモリスの博物館)

スタンデンハウス(モリス商会がデザインしたクライエントの家)

ケルムスコットマナー(モリスが”地上の楽園”と呼んだ自邸)


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